人はこれまで常に、もっと理解しやすい方法を模索してきました。それによりITは、コミュニケーション、コラボレーション、情報の共有、それから検索と革新性に関する能力を大幅に伸ばしてきました。
MITが世界初となるタイム・シェアリング・システムを発表した1961年以降、こうしたシステムにより、コラボレーション・テクノロジーの開発/導入が促進されてきました。「Web 1.0時代」の末期にあたる現在、企業ではメールとWebサイトが広く使用されています。テクノロジー・ソリューションまたはオンライン・サービスとして、Web会議、インスタント・メッセージ、共有ワークスペースが広い範囲で利用されています。さらに、コラボレーション・テクノロジーの次の大きな波が企業に押し寄せているため、社員の共同作業を移行するプロセスは今後も継続されます。
Web 2.0、Enterprise 2.0、ソーシャル・メディアなど、さまざまな名前で呼ばれるこの新しい波は、オープン・ソース・ソフトウェアへの流れによって促進され、インターネットのユビキタスな接続性によって増幅され、Wikipediaのような場を通じて一般化されたコラボレーション・アプローチを使用することで、長年存在していたWebテクノロジーを集約しようとしています。こうしたモデルでは、自治コミュニティ(数人から数百または数千人の規模で任意の場所に構成)が、コンテンツの作成およびクォリティ向上に自由に貢献することが可能です。
調査結果:どのような企業が熱心に取り組んでいるのか?
新しい研究では、どのようにして2.0テクノロジーが広く使用されているのか、経営陣がどのようにしてコラボレーション・ツールとしてこのテクノロジーの有効性を判断しているのかについて詳しく説明しています。『How American Companies Use Social Media』は、EMCを含む複数のクライアントを代表して、Gilbane Groupとマサチューセッツ大学ダートマス校のマーケティング・センターが共同で行った調査をベースにしています。このレポートでは、ほぼ300社に及ぶ企業(最低でも250人の従業員を擁し、年間売上高が2,500万ドル以上の企業)のマーケティング担当上級経営幹部の見方について調査しています。
今日の2.0ユーザー:導入して、そのメリットを実際に享受している企業は少ない
「Web 1.0テクノロジーの高い普及率と比較した場合、ソーシャル・メディアの採用率は依然として低いレベルです」と、この調査の共著者であるGeoffrey Bock氏(Gilbane Groupのコラボレーション担当リード・アナリスト兼Bock & Company社長)は語っています。「カバーしている7つのWeb 2.0テクノロジーのうち、3つのみを採用している企業の割合は10%超、1つだけ(ポッドキャスティング)を使用している企業の割合は20%超です。しかし私は、こうしたテクノロジーの採用が加速的に広がる転換点が近づいていると考えています。回答を寄せた企業は、こうした新しいテクノロジーのいくつかについて、非常に効果的であると評価していました。時期がくれば、多くのチームが実験を開始する予定です」。さらに、近い将来、こうしたテクノロジーへの投資を大幅に増やす計画が見受けられ、取り組もうとする意欲の大きさが反映されています。
早期導入企業:オープンで柔軟性があり、即応性に優れる
この調査の共著者であり、Center for Marketing ResearchのディレクターでもあるNora Ganim Barnes博士は、「この調査により、オープンで柔軟性に優れた組織がソーシャル・メディアを早期に導入する可能性が高いという考え方に微妙な違いがもたらされます」と語っています。ブログの使用を例にとった場合、Barnes博士は次のように述べています。「これまでの研究では、Fortune 500社のわずか8~9%、新たに調査した企業の10%しか、ブログを使用しておらず、公共機関および非営利団体のほぼ3分の1がブログを使用している実態と比較してみると、意外感があります。しかし、この新しいデータを業界別に見てみた場合、より具体的な状況が見えてきます」。たとえば、電気通信業界の24%の企業、およびソフトウェア業界の21%の企業がブログを使用していると報告する一方で、化学、製造、エンジニアリング分野の企業はブログを使用していませんでした。「歴史的に見て、ここに示した化学、製造、エンジニアリング業界は、閉ざされた環境であり、動きが遅い傾向にあります。したがって、採用率で遅れをとっているのは驚くべきことではありません」とBarnes博士は語っています。
自分たちの手によるコラボレーション
作業者が消費者向けWebサイト/サービスで得たオンライン体験に基づき、コラボレーション・テクノロジーに対する企業の需要が高まりを見せているケースが多数見受けられます。今日のナレッジ・ワーカーは、コンテンツの閲覧および精読にだけでなく、作成、編集、ランク付けにも慣れています。彼らは、ブログの読み手であると同時に書き手でもあり、Wikipediaやその他のオンライン共有スペースへの投稿者でもあります。さらに、同様のテクノロジーを自分たちの作業環境に導入したいと強く願っています。
Bock氏は次のように語っています。「こうした新しいテクノロジーが採用されるのは、一般的に『ボトムアップの草の根活動』によるところが大きいのです。人は、単にメールを送るだけでなく、タスクに関して共同作業および情報の共有を実行するための適切な方法を見つけようとしています。解決が必要なビジネス問題を抱えているチームは、IT部門によるソリューションの構築を待つことなく、オンラインでその問題を解決できる方法を模索しています。Web 2.0テクノロジーのコストが安く、導入しやすいこと、そして使いやすいことにより、ユーザーは自分達の手で、さまざまなソリューションの探索を行います。これは、ユーザーがIT部門にこれ以上頼りたくないからです。同時に、組織的なプロセスおよび設計に対して責任を持つ人々は、長期的な見方をしており、エンタープライズ・インフラストラクチャおよびITの投資を活用する方法を理解しようとしています」。
Web 2.0の問題点
Web 2.0テクノロジーの基本属性の多くに、良い面と悪い面が存在します。ここに考慮すべき2つの問題を示します。
ユーザーの生産性
新しいコラボレーション階層を追加すると、作業者の時間が電話、メール・メッセージ、インスタント・メッセージ(IM)に割かれ、学ぶべきことが1つ増えるばかりか、定期的に訪れるべき場所が1つ増えます。これに関しBasexのアナリストであるJonathan B. Spira氏とDavid M. Goldes氏は5,880億ドルの生産性低下が生じると主張していますが、これほどではないにせよ、過剰なコミュニケーションによる生産性の低下は重要な懸念事項となります。
セキュリティ、コンプライアンス(法令遵守)、ガバナンス
企業内および企業外の情報を共有できる場合、ユーザーが不注意に機密情報を漏らしてしまう可能性が高くなります。Geoffrey Bock氏は次のように語っています。「企業の側から見た問題は、情報を制御、管理、保護できないということです。Web 2.0では、セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス、情報ライフサイクル管理に関する問題に対処する必要があります」。
Pfizerpedia:1時間でwikiをセットアップ
Chris Bouton氏は、コラボレーションの効果の大きさをじかに体験したため、コラボレーションとはどういうものかについて理解しています。
マサチューセッツ州ケンブリッジにあるファイザーの研究テクノロジー・センターで、コンピュータを利用した生命工学を専門とするチームを率いるBouton氏は、wikiテクノジーを使って、情報の共有を図れるようにすることに関心を持っていました。そこで2006年初頭のある日、彼は、1時間かけて無料のオープン・ソース・ソフトウェアであるMediawikiをダウンロードし、机の下にあったスペアのサーバにインストールして、Pfizerpediaという名前の社内Webサイトを立ち上げました。彼の目標は、ファイザーの社内研究/開発(R&D)コミュニティ向けに、コミュニティのメンバーが協力して記事を作成できる、科学に関する百科事典サイトを構築することでした。
説得力のある解決策の検索に関する、緊急性の高いニーズ
ファイザーのコミュニティにはさまざまな優先順位が存在しており、それが、投稿を開始したコンテンツ・ユーザーや、実行した検索に反映されました。Bouton氏は次のように語っています。「ユーザーは、自分たちのプロジェクトを知ってもらうためにwikiを使用していました。さらに、ファイザーで他にどんなプロジェクトが行われているのか検索するのに検索機能を使用していました。後になって初めて、それが道理にかなっていることがわかりました。大企業であるファイザーにおいて研究者は、『研究の取り組みおよび資金で重複が発生する事態をどのようにして防げばいいのか』、『自分の分野で他にどんなプロジェクトが進行しているのか、どのようにして把握することができるのか』、『他の社員とどのようにして共同作業を行うことができるのか』といった、重要な問題に直面していたのです」。
わずか4か月で、数千におよぶ社員がコンテンツを投稿したため、このサイトは急激に成長し、百科事典をはるかに超える強力なツールへと発展しました。この結果、世界中に広がるファイザーの拠点における研究開発に関するすべての項目(社員、プロジェクト、イベント、ブログ、ディスカッション・グループ)について、ユーザーによる一元的なインデックスが作成されました。そしてエンタープライズ・ディレクトリおよび他のデータ・ソースとの統合により、より的確な検索が可能となりました。容易に検索できるため、ユーザーは、関連する作業を行っている社員を迅速に特定することができます。そして、連絡先情報だけではなく、最新のプロジェクト、発表内容、セミナーも検索できます。この結果、毎月平均1万2,000人に及ぶ一意のユーザーがこのサイトにアクセスするようになっています。
他の社員との交流とアイデアのやりとり
測定することは困難ですが、そのインパクトは明らかでした。Bouton氏は次のように語っています。「私は常にさまざまな話を耳にしています。あるとき研究者が私のところに立ち寄って、『検索をして、誰かが関連したプロジェクトの研究を行っていることに気づいたんだ。それで、共同で新しいプロジェクトを立ち上げることにしたよ』と語ってくれました」。こうした方法で社員の交流を図ることで、革新性につながる試みが促進され、製薬に関する開発プロセスに必要な期間が短縮されました。この結果、ファイザーはR&Dから最大限の収益を上げることが可能になったのです。
Pfizerpediaは、大規模なインデックスとして機能することに加え、ドキュメントの作成に関するプラットフォームも提供します。チームはwikiを使用して、計算ソフトウェアに関するユーザー・マニュアルを作成できます。さらに、ソフトウェア・バグを特定して修正するためのディスカッション・スレッドを管理できます。Bouton氏は次のように語っています。「wikiには多様な機能が備わっており、情報を共有したり、情報を構築したりすることが可能です。基本的にPfizerpediaは、系統的な情報格納のためのリポジトリを構築できます」。
Whartonにおいて10年にわたりWebベースのコラボレーションを実行
Wharton School of the University of Pennsylvaniaでは、1998年以来、webCaféと呼ばれるコラボレーション環境が生徒の学習・経験において重要な役割を果たしてきました。
Wharton Computingのプロジェクト・リーダーであるRob Ditto氏は次のように語っています。「コラボレーションの促進は、今日のマネージャにとって重要な課題です。したがって、コラボレーションを実現するツールとアプローチを使用することにより、快適に作業できることを学ぶことは重要です」。1万人に及ぶ生徒と教授陣がwebCaféのアクティブ・ユーザーであり、教養課程と生徒グループの両方に対して2,300以上の共有ワークスペースが設定されています。Ditto氏は次のように説明しています。「教授陣は、それぞれのクラスの資料を投稿し、生徒はそれに対しいつでもアクセスできます。ドキュメントの共有、修正履歴の管理、グループ編集などの機能により、チームはコンテンツを協力し合って作成することができます。生徒は、『仮想オフィス時間』を利用して、オンラインで質問を行った後、クラス全体で教授の回答を表示できます。この結果、すべてのユーザーの時間を大幅に節約することができます」。
